2020年3月に修士を修了した正角さんの研究をまとめておきます。 ダンゴムシを迷路に入れると、ダンゴムシは左、右、左、右…と交互に進みます。このような性質は交替性転向反応と呼ばれて広く知られています。長時間に渡って観測し続けると、個体によっては交替制転向反応の発生頻度が変化し、より効率の良い探索行動をとる様子が観測できるようになる可能性があります。 これは動物行動学という分野の研究であり、行動の観測からダンゴムシの「心」の存在をも議論していくことを目指しています。
そこで、カメラ画像処理やモーター制御などのロボット技術を用いたダンゴムシの行動自動観測装置を開発しました。装置はパソコンやビデオカメラ、ステッピングモーター、3Dプリンタで作ったT字迷路やギヤなどで構成されます。画像処理や制御、行動分析のソフトウェアもすべて研究室で自作しました。
この装置を実際に動かしている様子です。ダンゴムシの行動を長ければ8時間程度連続的に測定し続けることができます。その間は人間は一切の操作をする必要はなく、自動観測装置としての完成度は高いです。
この成果は海外の論文誌にも掲載され、装置は共同研究としてご指導いただいた信州大学森山先生の研究室でさらなる研究の発展に向けて使われています。ちなみに森山先生の研究室では、ダンゴムシだけでなく本来は深海に生きるオオグソクムシをあえて浅い海を模擬した実験装置に入れて、海から陸に上がってくるときの行動をカメラで観測しています。